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車に「命を預ける」以上、何より安全性や品質に問題がないことが重要で、日本人は特にその思いが強い。

それゆえ昔から中古車に対して懐疑的な目を向ける人も少なくない。

しかしメディアにクローズアップされるのは、車そのものよりもお金の流れや従業員の扱いに関する内容ばかり。

かねてよりビッグモーターをはじめ、日本の大手中古車販売会社がいろいろと問題となっている。

これだけ大きい企業が不祥事をやらかせば顧客や従業員へのケアのみならず、取引先側の利益にも影響するからフォーカスが向けられるのも無理はない。

ところで、商品である中古車そのものはどうか。

実際は車というよりも商品でしか見られておらず、もっと言えば「車に擬態したお金」となるので車としての立場で考えられることはない。

商売道具に対する感情など二の次。

たとえ車に感情はなくても、車側からしたらどこかさみしい気持ちにもなるだろう。

車好きとしてすこし車のことを考えてみると、単に商品というわけではなく日本の資産として見ることができるような気がした。

端的に言うと

「こと対外貿易においては販売会社だけでなく、国自身も一企業の身として中古車という商品を売る」

方が良いのではないかと。

まず、中古車視点からすると

「俺たちは商品やお金そのものというよりも、お金を生み出す木である」

と主張することができる。それはなぜか。

今後、というかすでに実行されているが、

ビッグモーターが資金繰りに困った際、まずは在庫車をオークションに流して現金化する。

もし国内で売れる見込みがなければ輸出して海外へ売りに出すだろう。そうすると国内市場におけるタマ数が減る。

この段階で国内流通量の多い車種や不人気車種、現在も新車で(かつ、適切な納期で)入手できる車種はまだなんとかなる。

しかし、すでに生産終了した貴重な旧車やスポーツカー、または海外需要の多い車種を「資金調達」のために輸出されていたら欲しがっている日本人に行き届かなくなってくる。

海外需要の多い車種が必ずしも国内需要と一致するかといえばそうではないので、国内需要が少なければ輸出してもさほど問題ではないだろう。

ただここで重要なのは「海外需要の多い中古車を安価で輸出していないかどうか」という点。

ビッグモーターがそうした車種や絶版になったレアモノを保有していたかどうかは別として、価値がある車を持って行かれるというのは

金の成る木を引っこ抜かれることでもある。

そういった中古車を、いとも簡単に外国に渡すのはもったいない。

日本の一資産であるという意識を持ち適正な利益を上乗せして買ってもらわなければ、ただでさえ円安で苦しんでいる国民にお金が入らず経済が停滞する。

簡単に安価で売り飛ばすことだけはしないでいただきたい。

そして、これはお金を稼ぐためだけの上乗せではなく「世界的に人気のある絶版車」「車を綺麗に大切に乗り回す日本人が乗っていた車」という付加価値がついている。

適切に整備された中古車なら、1台あたりの利益率もだいぶ良いはず。

日本としてはメーカーが国内にあるから、いざとなったら当時のレシピから新しく車を作れば良いとでも考えているのだろうか。

だとしてもそれがいつになるかわからない以上、車好きにとっては乗れるうちに乗りたい気持ちである。

ところが現実問題、中古車バブルで価格が値上がりしている反面収入が増えないのでなかなか乗れないのがつらい。

では具体的にどのように改善すれば良いのか。

個人的には、販売会社とバイヤーが売買契約を結ぶ際、国交省や経産省で買取価格の査定を通すのが良いと考える。

取引成立前に国家機関が査定することで、それが適正価格であるかどうかを判定する。

判定後の価格で取引成立しない場合は、国家機関を含めた三者で交渉する。

ここでいう適正価格とは国内市場における時価、そして今後の流通見込みや投資価値、国際的な相場を満たすような価格のこと。

ニュアンスは異なるが、iPhoneが国によって異なった価格で売られているのと同じような状態を作り出す。

例えば200系ランクルの国内市場における平均相場が400万だとする。

ランクルは中近東やオセアニアでよく売れるので、そのエリアへ輸出する場合に

・中近東は富裕層が多い

・歴代ランクルの売れ行きも良く、中古でも一定の需要がある

・200系はランクルの中でも新しめ

・国内での人気グレードはZXなので、輸出しようとしている個体が同グレードであれば国内のタマ数が減ることになる

といった点を考慮すると、500万や600万で売りつけても買ってもらえるのではないかと期待できる。

その車種が世界的もしくはその国や地域内での評価が高いなら、その分強気な価格設定で出しても国が適正価格と判断したならその金額で売るようにする。

ただ、車種ごとの適正価格を都度更新したとて個体ごとに整備状態や品質は異なってくるため、最終的には1台1台を検査する手間が発生する。

流通台数に対して人が足りなさすぎるので、一部の需要が多い車種や限定車を対象に始めるでも良いかも。

そのコストを踏まえても利益が出る場合には輸出して、赤字になるようなら許容範囲の損失額で抑えて輸出するか修理用パーツとして分解することで別の視点から国内外の需要を見極める。

そのようにして、中古車の商品力というものを認識した方がいいのではないかと。

自動車産業は日本の基幹産業である以上、中古車ももっと有効に活用するべき。

特にコスト面で現実的に行われる可能性は非常に低いが、

もし仮に日本市場からある車種の中古車数が切れた場合、法律上国内走行が可能な性能やスペックであればもう一度メーカーに作らせることもできなくはない。

再販されれば国内市場では手の届きやすい価格で流通する。

数年前に買い取った海外業者にしてみれば結果的に割高な買い物となるので、その差額分だけ日本に利益が持ち込まれたことになる。

(もしかすると応酬として、半導体供給先となる地域から日本の優先度を下げる国が出てくるかもしれないが、再販されたら同様に海外でも売ればいいから影響は限定的)

そして、適正価格での取引によって増加した利益については、その全てを販売会社の懐に収めないよう法的な仕組みも必要。

差額分儲けた日本の中古車業者の手に100%の利益が渡るのもよろしくない。

ビッグモーターの在庫車を現金化しても、結果的にビッグモーターの懐に入るたぶん多くの人が嫌がるだろう(現金化した分だけでなく創業者一家の財産をぶんどれる程度の賠償をさせたい、ビッグモーターには潰れてもらいたいという徹底した憎悪を持っている人間も中にはいるのでは)。

なので、売価金額の2〜3割を国が持っていき、それを道路整備の財源にする。

これにより歳入が増えるため、ガソリンの二重課税とか、重量税とか、13年ルールとか、税金による国民負担を撤廃ないしは減額するムーブを取りやすくなる。

なにより、こうして利益を出さないと購買力のある日本人が減っていき、国内のクルマ文化が発展しなくなってしまうのではないか。

ということで国には税金以外の収入を上げる努力をしていただきたい。

その点中古車というのは結構有用なのではと、思った次第。

てか車だけでなく、一般的にサービスや商品の単価が高くなると必ず悪徳業者が現れるのって、欲望やカネに取り憑かれた典型的な人間の性分だよなぁ、、